3月13日の観察 薄曇り〜晴れ 参加者9名

 2月は雷雨だったので中止。久しぶりのみんなの顔、明るい春の気配に満ちた観察会となった。

 室川に沿って歩く。千村(ちむら)の田んぼではセリ、カンゾウ、フキノトウなどが「摘んで、摘んで」と言わんばかりだ。レンゲもわずかに顔を見せていた。ナズナ、タネツケバナ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ満開。子供たちがいたらどんなに喜ぶだろう。ピンクや白の花束を作ったり、花の蜜を吸ったりするだろう。

 「千村生き物の郷」ではイノシシのヌタ場の痕があちらこちらに、夜になると何頭ものイノシシがやって来るのだろう。ワナも何ヶ所か設置されている。斜面を雑木林の中登って行くと、足元のタヌキのため糞には柿とケンポナシの種子がたくさん混じっていた。コナラの根際にノウサギの糞。見回せばアブラチャンの黄色い花やツノハシバミの薄茶の紐を垂らしたような花々。春いっぱい、命いっぱい!

 

 海を見晴るかす眺めの良い尾根を越えてすぐ、峠の集落に下る。集落から隣接する東の畑に登ると、頭をドカンとやられたような景色が拡がる。霊園開発の工事現場である。草から木から緑という緑がすべて剥ぎ取られ、赤裸のむき出しの骨のような大地には言葉を失う。

 足元に中村川の源流となる沢を抱え、一年ちょっと前には広大な雑木林に覆われていた場所・・・神奈川県が「人にとっても生き物にとっても、こんな素晴らしい環境は末永く残すべき」と環境調査書に自ら書いたその場所が・・・!

 

 ここは丹沢と大磯丘稜をつなげる大事なポイント。

山の要素を丘稜に拡げ、里山に豊かさをもたらす大事な場所だったのに…。我々は子供たちにこの場所を残せなかったことで、ずっと後悔し続けることになる。

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 この日はアマナのつぼみが少しのぞき始めた山道を登り、竹やぶを抜けて八国見山山頂で遅い昼食を済ませ、コジュケイが呼びキブシの花がふさを垂れるハイキングコースを町の方に戻った。 (日置)

(上の写真はクリックすると大きく見ることができます。また植物の名前も確認できます。)

 

モクレイシについて(ニシキギ科)

暖かい地方の沿海域の林に生える常緑低木。雌雄異株。およそ1年かかって結実する。‘隔離分布’で有名。

 

日本のモクレイシ属はモクレイシ1種だけ。分布地域が特異的で、房総半島南部が北限と言われているが、神奈川では大磯丘稜、少し離れて伊豆半島、伊豆七島、そしてはるかに離れて九州南部、五島列島、琉球諸島に分布している。これが‘隔離分布’と言われる所以で、また日本以外では台湾に分布している。

 

神奈川では大磯の高麗山(こまやま)で沢山見られるが、渋沢丘陵では実生(みしょう)も含めて結構見ることができる。集落の昔からの生垣などに混ざって植えられているものも多く、2〜3月頃、小さな白い花が濃緑の葉の間に咲き、おなじく2月頃に長さ約2センチ内外の緑色で俵型の果実が、目につくようになる。この緑色の果被は完熟すると二つに割れて落ち、中のオレンジ色の種子が目立つようになる。