丘稜のはずれの 集落のはずれの 藪かげの 田んぼの片隅
雑木林に降って 落ち葉の下にしみこんで
土の中を潜り抜け やがて わずかにしみ出た水が 集まって
田を養い畑を潤し 人の目を楽しませながら
源流と呼ばれるささやかな流れになって
それがあっちこっちから集まって
やがて大きな川となって 海へと旅立っていく
このささやかなもの 「春の小川」
懐かしいすがた…
忘れ去られたようでありながら
季節になると だれかが 野の草を摘みにポツリポツリとやってくる
陽の温かさにくるまれて 思い出に浸るために
自然の懐に抱かれて
しばし 時空の旅を楽しむために
こんな素晴らしい身近な自然が どうか
なくなることのありませんように
雑木林を見上げる空で
「もうそろそろかな…」
「もうそろそろだね」
枝を交わすようにして 木たちがひそひそ話
もう葉っぱを広げようかという相談です
「わたし もう花咲かせたよ!」と元気にヤマハンノキ
「だって花粉を飛ばすには葉を出す前のほうがいいんだもの」
イヌシデもアカシデもそれにつづくでしょう
みんな 風に花粉を飛ばしてもらう仲間ですから
山では今 そろそろ帰り支度している冬鳥たち 営巣の準備をしている鳥たち
モズのペアが笹薮を出たり入ったり ハシボソガラス2羽が巣材を口にくわえて 飛んでいきました
雑木林では カラ類のさえずりが聞こえています
聞こえますかぁ
昨夜の雨は塔ノ岳では雪でしたけど
山は朝の光をうけて
うっすら紅色 春を迎える嬉しい紅色
そうして ほら 聞こえるでしょ
丘稜ではウグイスが鳴き始めましたよ
はじめはやっと思い出したように遠慮がちであったのが
今朝は のどの調子も上々 私にもはっきり聞こえてきました
見上げる梢をシジュウカラが2羽3羽つんつんと枝をつついて
黒光りの繻子(しゅす)のネクタイが見事です
エナガが軽業師のように枝先で軽く身をひねって続きます
極め付きは アオゲラのピヨーピヨーという声!
黒い影が素早く幹を滑ります
誰もかれも この一日の始まりを体全体で喜んでいます