〈朝の光に土ぼこりが……〉
ピリリとした寒い朝
光が透きとおる寒い朝
冬枯れの梢にノスリはいた
ここは工事現場のすぐ西側
隣接する畑の縁
畑の縁の この梢が
いまは彼女のとまり場
彼女のとまりたかったあの梢は
もうない・・・
見てごらん
猛り狂った黄色い鉄の巨大なものが
ガリガリグゥイーングゥイーン
土煙をあげて 吠えて走り回っている
深くえぐれて 山裾に水を流していた
あの沢はいったいどこへ消えたの?
平らで無表情な堅い地面が 代わりに拡がっているばかり
モグラもネズミも居やしない
樹々で埋め尽くされていた電波塔の下の斜面は
きれいさっぱり裸にされて
なにやら作業が始まっている
「生き物のために、里山の自然はそのまま未来へ残す。現代においては、何もしないというそのことが、人のためにも経済のためにも、地球のためにもなるのです」
亡くなられたT先生の言葉が浮かぶ
この朝、ノスリは物思いにふけっているように
私には思えた