雨に向かって白い花が咲く季節がやってきた
過ぎてゆく5月 一日一日が慌ただしく
ミズキなどは咲いたと思ったらもう散る
いちめん若緑の山の風景のなかに
白いだんだんのように花をつけて
目を奪うようであったのが いつの間にか終わり
いまはこんもりと背の低いガマズミが盛りだ
エゴノキもエゴツルクビオトシブミのたくさんのゆりかごを残したまま
花は地面に散り敷いた
今 丘稜で出会うウツギの仲間は
コゴメウツギ マルバウツギ ニシキウツギ
それから ウツギである
匂うかのように白々と咲くウツギが雨の季節にきわだつ
夏鳥もそろい キビタキの声は林のなかほどから
「チョンチョロリ チョンチョロリ オーシイツク」
と絶えず聞こえてくるし
サンコウチョウの声もときおり遠くから聞こえてきて
皆んなの足を止める
私には聞こえないヤブサメやサンショウクイの特徴のある鳴き声も
頻繁に聞こえてくるようだし…
一番しんがりにやってきたホトトギスの声も
遠く近く聞こえてくる
とくにまだ空けぬ夜の闇をぬって届く「テッペンカケタカ」は強烈で
雨の季節の到来を予感させられる
電線にとまる尾の短いツバメの雛も よく目にするようになった
でも、私たち いつまでこの幸せを味わうことができるのだろう
ふっと不安に襲われる
鳥の数は明らかに減っているのだし
開発によって変形させられた地殻
のっぺらぼうの物言えぬ地殻を目の当たりにするとき
謝ったらいいのか それとも怒ったらいいのか
誰にむかってか… 自分に向かってか…
自然に向かってか… 人間に向かってか… わからなくなる